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2023(令和5)年3月15~17日に、化学工学会第88年会が東京農工大学で開催されました。本会は、年2回開催される化学工学会の研究講演発表会の一つであり、化学工学に携わる全国の研究者が参加する大規模な大会です。本会では優れたポスター発表を行った学生に対して産学の研究者からなる審査員が研究面及び発表について総合的に審査したうえで表彰しており、対象となった274件のポスター発表に対して、最優秀学生賞6件、優秀学生賞33件、学生奨励賞16件が選ばれました。その中で、マテリアル・バイオ工学コース5年の上平 匠真さん(指導教員:本間 哲雄准教授)が「セミバッチ式亜臨界水装置を用いた積層化プラスチックのケミカルリサイクル」学生奨励賞を受賞しました。今後のますますの活躍が期待されます。
研究内容:
積層化プラスチックは各種プラスチックを積層させて製品の性質を向上させていますが、各層の分別・分離・回収が容易でなく、リサイクルされずに焼却されています。本研究では高温高圧にした水である亜臨界水と工業化を志向したセミバッチ式装置を用いて積層化プラスチックのリサイクルを検討しました。そして、昇温速度や流量が生成物量分布に与える影響を比較して、積層化プラスチックの分解メカニズムを検討しました。実験から得た生成物量分布から、PETは1段階で分解するのに対し、ナイロンは2段階で分解が起こることを明らかにしました。1段階目はε-カプロラクタムのオリゴマー、2段階目はアミノカプロン酸のオリゴマーが生成しました。この傾向は単一組成での分解試験と同様であり、互いに反応促進・阻害効果を示さないことも明らかにしました。今後は、反応条件の操作により分解傾向へ及ぼす影響を検討し、積層化プラスチックのリサイクルが可能な社会を目指したいと考えます。