中村雅徳教授らの国際共同研究プロジェクトが「初撮影から1年後のM87ブラックホールの姿 」を公開しました
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イベント・ホライズン・テレスコープはM87巨大ブラックホールの新たな観測画像を公開しました。2017年の初撮影(左)から約1年後に撮影された2018年の画像(右)でも同じ大きさのシャドウが再現されていることがわかりました。2018年の観測には、新たにグリーンランド望遠鏡が参加しています。明るいリングに囲まれた中央の暗闇がブラックホールのシャドウ(影)に相当し、リングの最も明るい場所は2017年の画像では6時の方向、2018年の画像では約30度異なる5時の方向にあります。(画像クレジット:EHT Collaboration)
2017年の画像ではリングの最も明るい場所が6時の方向にありましたが、2018年の画像では約30度異なる5時の方向にありました。これはブラックホール周辺の物質による乱流状の振る舞いが影響していると考えられ、2017年と2018年でリングの細かい明るさの分布は大きく変化しうると理論的に予想されていました。変化したとはいえ両者の画像の明るい場所が似ていることも重要です。明るい場所が南側であることは、理論的にブラックホールの自転軸がほぼ東西方向であることを示唆しています。そしてそれはブラックホールから離れたところで観測されているジェットの方向と近いことがわかりました。
GLT計画は台灣の中央研究院天文及天文物理研究所で、中村雅徳教授を含む台日米の研究者らが創立したプロジェクトです。アメリカのスミソニアン天体物理研究所と共同運用し、M87のブラックホールシャドウの撮影を目標に進めてきましたが、2018年のEHT観測に初参入を果たしました。中村教授は2018年のEHT観測提案執筆、GLT計画におけるM87の研究、特にブラックホールから噴出するジェットの理論研究に携わってきました。中村教授は「2010年より日本人研究者たちが中心となって進めたグリーンランド望遠鏡計画が結実し、本成果に貢献できたことは光栄です。今回の観測からブラックホールの自転によりジェットが駆動されている可能性にまた一歩近づいた」と述べています。
・論文情報
本研究成果は、2024年1月18日付で欧州の天文学専門誌「Astronomy and Astrophysics」に掲載されました。日本を含む世界の80機関、300名超の研究者からなる国際共同研究成果です。
論文タイトル: "The persistent shadow of the supermassive black hole of M87. I. Observations, calibration, imaging, and analysis"
著者:Event Horizon Telescope Collaboration et al.
DOI: https://doi.org/10.1051/0004-6361/202347932
・関連リンク
詳細はEHT-Japanプレスリリースをご覧ください
https://www.miz.nao.ac.jp/eht-j/c/pr/pr20240118
・問い合わせ先
中村 雅徳
八戸工業高等専門学校総合科学教育科 教授
台灣中央研究院天文及天文物理研究所客員研究員
E-mail: nakamrms-g◎hachinohe.kosen-ac.jp
(◎を@に変えてください)