電気情報工学コースの角館俊行助教らによる、分子一個の電子の磁気信号を検出する技術開発が、米国化学会誌Nano Lettersにオンライン掲載されました
カテゴリ:事務局
近年、量子コンピューターの物理的単位を担う量子ビット(キュービット)の開発が世界中で行われています。本研究では、キュービットの候補の1つで、分子1個で磁石の性質を示し単分子磁石と呼ばれる分子、テルビウム・フタロシアニン錯体(TbPc2)分子を、走査トンネル顕微鏡(STM)を用いて調査しました。今回、STMの金属探針から交流電界(ラジオ波)を照射することで直径約3 nmの分子1個の電子スピン共鳴(ESR)分析に成功し、単分子のスピン状態が単分子を取り囲む化学環境により引き起こされることを新たに見出しました。
今後、本研究の単分子ESR分析手法を単分子スピンの数を増やして行うことで、複数キュービット量子コンピューター構築のために必要不可欠な情報を得ることが期待されます。また、この手法の根幹技術である磁気共鳴は様々な化学分析に用いられており、医療分野では磁気共鳴イメージング(MRI)に応用されるなど重要な分析手法となっています。単一分子ESRは、従来のMRIでは到達できなかったナノスケールの高空間分解能を有するので、様々な分子への応用が期待されます。
掲載誌:Nano Letters
DOI:10.1021/acs.nanolett.2c04049