環境都市・建築デザインコースの庭瀬一仁教授らの、「Low-Level Radioactive Waste Disposal in Japan and Role of Cementitious Materials」が「Journal of Advanced Concrete Technology」に掲載されました
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今年の夏と冬に迫る電力不足の危機、なぜ供給余力が厳しくなったのか?このような昨今、原子力発電の再稼働について多くの議論がなされています。再稼働に当たっては、発電所の安全性が最重要とされていますが、この課題とともに重要視されているのが放射性廃棄物処分の安全性です。放射性廃棄物の処理は、持続可能な社会を構築する上で非常に重要な問題の一つです。
放射性廃棄物は原子力発電所、医療、研究施設等から発生します。発生量は他の廃棄物と比較して少なく(国民一人当たり年間の発生量は、一般廃棄物と産業廃棄物が 4.3tに対し、放射性廃棄物は 131g)、放射能は時間と共に減衰する特性があります。放射性廃棄物は、放射能濃度に応じ、処分深度、施設の設計、管理方法が異なり、規則等に基づき事業許可を得て埋設する必要があります。低レベル放射性廃棄物ではセメント系材料が漏出防止、移行抑制および遮蔽のために用いられています。
本稿では、我が国における低レベル放射性廃棄物処分の歴史と現状、放射性廃棄物の分類と処分方法、設計の概念と長期線量評価について概説しており、特に現在青森県六ヶ所村において事業を実施している低レベル放射性廃棄物の浅地中ピット処分や今後検討が進められる中深度処分に関し、セメント系材料を中心に、安全確保や設計の考え方について概説しています。
今後原子力発電所の廃炉も計画されており、低レベル放射性廃棄物の処分はその重要さを増すと考えられています。セメント系材料は、処分の安全性を担う重要なバリア材であり、特に長期耐久性の観点での技術の向上が引き続き期待されています。本稿が、低レベル放射性廃棄物の処分に対する理解と関心に寄与できれば、また、多方面な分野からご意見をいただければ幸いです。