第三者による調査委員会から本校に提出された「学生の自殺未遂事故に対する八戸工業高等専門学校の諸対応に関する調査報告書」についての本校の対応
カテゴリ:事務局
令和2年12月25日
各位
第三者による調査委員会から本校に提出された
「学生の自殺未遂事故に対する八戸工業高等専門学校の諸対応
に関する調査報告書」についての本校の対応
八戸工業高等専門学校
校長 圓山重直
平成29年6月28日に八戸工業高等専門学校元学生が、重篤な障害を負った重大事故(以
下、この事故を「本件事故」といいます。)について、第三者による調査委員会より標記報
告書(以下、調査報告書といいます。)が令和2年6月30日本校に提出されました。本校
は、提出を受けた調査報告書について厳粛に受け止めており、全教職員が一丸となって、今
後本件事故のような悲しい出来事が起こらないよう学生の見守りに鋭意努めてまいります。
調査報告書では、「当委員会からの提言」として、危機管理を重点とした今後の学校運営
について助言をいただいております。本校はこの提言に対し、今後学生をあらゆる危機から
守るために、真摯に対応する所存であります。
調査報告書の取り扱いについては、本件事故がすでに青森地方裁判所にて係争中である
こと、また、本件事故関係者の個人情報流出による社会的影響を考慮して、全文公表は差し
控えております。なお、調査報告書のすべてを青森地方裁判所へ裁判資料として提出してお
ります。
以下に「当委員会からの提言」に対する本校の今後の取り組み方針を説明させていただき
ます。
学生の自殺未遂事故に対する八戸工業高等専門学校の諸対応に関する調査報告書(第三者に
よる調査委員会報告書) 「当委員会からの提言」に対する本校の対応について
当委員会からの提言 (原文をそのまま引用しております。)
IT化が進み,学生と社会との接触範囲が拡大し,学校や保護者の監督能力に限界が生じ
つつある現代は,保護者の目の届かない場所で学生が外部から苛烈な攻撃を受け,回復困難
なダメージを負う危険性を内包している。昨今,問題となっているSNS上での誹謗中傷な
どはその典型であり,学生たちは,いつ何時,被害者になるやもしれない世界に生きている。
したがって,教育機関は旧態依然とした組織のまま,牧歌的な意識のままでは,学生を守
ることができない時代に来ている。
今回の事故で代償として失ったものはあまりに大きいものではあるが,当委員会としては,
今回の件を教訓として,以下のような提言を行いたい。八戸高専としては,この提言を今後
の学校運営の一助として欲しい。
1 危機管理意識の向上
まず,学内外において学生が何らかの攻撃に晒されたとき,学校は,その攻撃がどのよう
な内容のものであり,学生にどのような影響を及ぼすのかについて,事実の調査と分析を行
い,その攻撃の違法性,危険性を冷静に判断しなければならない。一般的に組織は,問題を
大きくしたくないという意識が働き,危険度の判断を謙抑的に行いがちだが,八戸高専にお
いては,攻撃に晒されているのが,自己解決能力の低い未成年者であることを念頭に置いて,
むしろ積極的に危険性の判断を行う必要がある。
とはいえ,教育の専門家である教職員が一朝一夕で危機管理意識を涵養できるものではな
い。個々の教職員の危機管理意識を高めるためには,例えば,全国の高専で発生した問題(い
じめ,児童虐待,外部とのトラブル等)を機構が集約して各校へ情報提供を行ったり,弁護
士や警察を呼んでの研修を行ったり,教職員間でのグループ討論を行ったりなどの研修の場
を定期的に設けるべきである。
[本校の取り組み]
本件事故の後で、危機管理意識の向上のために、教職員に対して、ハラスメント防止に関
する講習会やいじめ防止に関する講習会などのFD(教職員研修会)を複数回実施しており
ます。
また令和2年7月に、従来の「いじめ防止等基本方針」を全面的に見直して、新たに「い
じめ防止等基本計画」を策定しました。同計画には年間の「いじめ防止プログラム」が含
まれており、その中に教職員の資質向上のための取組みについても記載することで、教職
員の危機管理意識の向上を図る研修等を計画的に実施する体制を整備し運用を開始して
います。
令和2年度の取組として、国立高専機構本部が作成したビデオ視聴による研修を、非常
勤を含む全教職員が受講中であるほか、令和3年1月にはそれを踏まえて、教員を対象と
したワークショップを実施予定です。このワークショップでは、過去のいじめ等の事例を
取り上げ、本校のいじめ対応フローを確認しながら、対応方法や未然防止のための学級運
営等についての研修を行うことにしております。
令和2年7月のいじめ防止等基本計画の策定に合わせ、本校では従来の「いじめ防止等
対策委員会」を廃止して新たに「いじめ対策委員会」を設置しました。同委員会には、い
じめの未然防止と早期発見を担当する「企画調整部会」を新たに設置し、前述の資質向上
研修等の企画・運営を組織的に行う体制を整えました。
今後は、児童虐待や外部とのトラブル等のテーマを取り上げたり、外部の多様な講師を
招聘するなど、危機管理意識の向上に向けた取り組みを強化してまいります。
2 保護者との連携
学生を守るために,保護者と学校の連携が必要不可欠であることは,論ずるまでもない。
特に,寮生は保護者の監督下になく,また寮生の年齢的にも,親に対し逐一,悩みを相談す
るということは想定しがたいのであるから,八戸高専が適宜,こまめに情報提供をし,学校
側から積極的に保護者との連携を求めていく必要があろう。もちろん,ケースバイケースで
はあるが,情報を小出しにしたり,情報を操作することは,保護者の不信感を生み,結果と
しては保護者との協働体制がとれなくなる可能性があることにも留意すべきである。
[本校の取り組み]
高等教育機関である本校は、学生に自立した責任ある行動を求めていることから、低学
年生に対しても「学生」として本人との関係を中心に対応してまいりましたが、今後は、
低学年生は高校生と同年代であるという認識に立ち、学生の事件・事故はもちろん、その
他学生の安全に関すること等に関して、事案発生の段階から保護者と情報を共有し、連携
して対応してまいります。
また、学校、学級担任、学寮担当教員等と保護者が迅速に連絡を取るためのシステムと
して、令和2年10月に「さくら連絡網」という携帯電話メールを介した連絡ツールを導
入し運用しております。
3 チーム対応の必要性と教職員の協働
本件のような複雑な問題はもちろん,学生に生じたトラブルについては,できる限り教職
員がチームを組んで対応すべきである。その際,事案によっては,スクールカウンセラー,
スクールソーシャルワーカー,医療従事者,弁護士などの専門職を配置して,対応する必要
もあろう。
また,本件のように複数のチームが対応すべきような複雑な事案の場合には,情報収集と
その情報の共有,方針の意思統一が計られなければ,事案の解決を一層困難とする。
したがって,教職員の協働化を推進するために,教職員の参画的な情報交換を可能にする
システムを構築し,その情報の整理と分析を行うチームを作り,そのチームを中心として方
針を話し合う場を密に設ける必要がある。
[本校の取り組み]
本件事故の後、平成31年4月に相談室のインテーカーでもある保健室の看護師を増員
しました。また、同時期に専門職であるスクールカウンセラー(以下、「SC」といいます。)
やスクールソーシャルワーカー(以下、「SSW」といいます。)を雇用し、学生支援体制の
強化、学生ケアの充実を図りました。
いじめに関する事案については、学生主事(いじめ対策委員会副委員長)、ハラスメント
についてはハラスメント相談員が窓口となり対応する体制をとっています。なお、いじめ
については組織体制を更新して新たに「いじめ対策委員会」を設置し、事案発生時の対応
の流れを全面的に見直すとともに、「いじめ防止等基本計画」を策定して未然防止・早期発
見・事案対処の体制等を強化しました。同委員会では、校長・各主事の管理職、相談室長、
看護師、学級担任やクラブ顧問のほか、SCやSSWがチームとして組織的に対応します。
また、本件事故の発端となった、学生に対する外部からの攻撃やその他のトラブル等の
様々な事案についても、組織的に対応できる体制の整備に向け検討を行っております。定
期的に実施している全学生対象のいじめに関するアンケート調査や、学級担任・相談室・
保健室等を通じて把握した事案の情報を取りまとめて対処する基本の組織「対策委員会
(仮称)」を設置するとともに、事案の内容・規模によっては、対策委員会が、関係する教
職員による当該事案専門のチームを設置し、事案の解決まで継続的に対応する体制とする
方向で検討を進めております。なお本件事故のように、複数のチームが関わる複雑な事案
が発生した場合には、対策委員会が中心となって各チームの情報の整理と分析を行い、方
針の統一を図りながら解決にあたることを想定しております。チームには、事案内容に応
じて必要な外部の専門職(医療関係者、弁護士等)をメンバーに加えることにより、高専
関係者だけでは見えない多角的な視点から学生の危機レベルを把握して適切に判断でき
るようにいたします。
4 事故発生後の主体的かつ迅速な調査
学校という集団生活を行う場では,学校事故,いじめ,自殺などさまざまな問題が発生す
る。その問題の芽を早期に摘むことが一番重要であるが,不幸にも学生の生命身体の安全が
害された場合,学校としては,当該学生や家族の気持ちにより添い,再発防止のために主体
的かつ迅速な調査を実施する必要がある。その作業は,学校として痛みを伴うものであろう
が,結果としては,その真摯な作業が,学生やその家族との信頼関係を構築し,さらには他
の学生やその家族,地域からの信頼を得ることとなる。
[本校の取り組み]
今後は、本件事故のような重大事案の発生を未然に防ぐことはもちろんですが、もし予期
せず発生した場合には、学生やご家族の気持ちに寄り添い、事案の発生状況、発生経過等を
速やかに調査し、事実を保護者に速やかにお伝えして、学生や保護者との信頼関係を構築し
てまいります。
また、本件事故のような悲しい出来事が起こらないよう全教職員が一丸となって取り組
んでいく所存です。
以上 ご報告申し上げます。