日本原子力学会 2023年春の年会が開催され、AC2の下沢さんが高圧熱水中でのリン酸ジブチル分解に対する金属担持触媒の影響と題して、口頭発表しました。


日本原子力学会 2023年春の年会が、東京大学駒場キャンパスで開催され、AC2の下沢 舞優さんが高圧熱水中でのリン酸ジブチル分解に対する金属担持触媒の影響と題して、口頭発表しました。

原子力発電所から発生する使用済み核燃料の再処理で用いられるPUREX法において、抽出溶媒に含まれるリン酸トリブチルは放射線により劣化して、リン酸ジブチル等の溶媒劣化物を生成します。そのため、そのため抽出溶媒は再使用前に炭酸ナトリウム等の水溶液で洗浄されます。この溶媒の洗浄工程で発生するアルカリ廃液に対しても、リン酸ジブチルは配管閉塞やガラス固化を阻害するリスクがあります。本研究ではこれまでにリン酸ジブチル対策技術として、高温高圧水中でのリン酸ジブチルの分解を行って、反応解析から300℃で30分間、350℃では5分間で99%分解率を得ることを明らかにしてきました。一方、アルカリ廃液には炭酸ナトリウムが含まれており、これが300℃以上で析出するために反応装置の閉塞を引き起こすことが課題となっています。これまでに金属酸化物触媒を使った反応温度低減を試みてきましたが、本発表では、引き続き高温高圧水中でのリン酸ジブチルの分解温度を低下させることを目的に、金属担持触媒を調製して高圧熱水中でのリン酸ジブチル分解実験を行い、反応速度定数と生成物分析から分解挙動を検討しました。

高圧熱水中での分解は、加水分解反応によって進行し、リン酸ジブチル濃度の一次反応に従うことを明らかにしました。また、金属担持触媒はこれまでの金属酸化物触媒よりも高い活性を持つことを明らかにしました。このことから、酸化物触媒よりも金属担持触媒のような金属の形態である触媒がリン酸ジブチル分解に有効であることを明らかにしました。

この研究は、経済産業省資源エネルギー庁「令和4年度放射性廃棄物の減容化に向けたガラス固化技術の基盤研究事業」(JPJ010599)の成果の一部です。