矢吹 文乃 Yabuki Ayano [ 博士(文学)]
総合科学教育科 助教
専門分野
- 日本近現代文学
- 日本近現代演劇
- アダプテーション研究
写真
研究課題
- 日本近現代文学におけるアダプテーションの諸相
- アダプテーションの視座からの再演研究
- 寺山修司の演劇研究
- 書物のデザインと作品本文の相関性
研究シーズ
日本近現代文学における「アダプテーション(Adaptation)」を研究している。
アダプテーションは「適応」を意味する英語であり、生物が進化して環境へ適応することを表すときに用いられる。文学研究ではこの意味が敷衍され、ある作品が改作されて別の作品に生まれ変わること、あるいはその結果生まれた作品を指す語となっている。例えば、小説の映画化、戯曲の上演、設定等を改変したリライトなどは、アダプテーションと呼ぶことができる。
アダプテーションは原作のコピーではない。翻案者が付け加えたオリジナルな要素によって、アダプテーションは原作とは別個に成立している。つまり、アダプテーションは原作の「ありえたかもしれない別の形」を示すことで、原作を相対化しているのである。
しかし、一般的にアダプテーションは"原作の劣化版"という印象を持たれている。こうした過小評価が起こる原因は、原作至上主義的な価値観の蔓延にある。だが、現代を生きる我々が観たり読んだりしている作品は、いまやアダプテーションでないものほうが少ない。アダプテーションを単なる劣化版とみなしたままでは、我々の受容文化の全貌を把握することは困難になる。アダプテーションの批評性に注目し、現代の受容文化を解明することが俟たれるのである。
そこで、私は寺山修司(1935-1983)の演劇作品の再演を対象として、アダプテーションによって原作の評価がいかに再考されるかを研究している。寺山を対象とする理由は、寺山自身が優れたアダプテーション実践者の一人であり、寺山の作品はアダプテーションされることを前提に作られているからである。
また、アダプテーションを繰り返す過程で事後的に作り上げられていった(原作にはなかった)作家・作品のイメージについても関心を持っている。そのため、書物のデザインによる作家・作品イメージの構築も研究を進めている。
画像の解説
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