大里　辰希 Osato Tatsuki ［博士（工学）］

　近年，次世代ワイドバンドギャップ半導体SiCやGaNの登場により，電源回路の高周波化が期待されています．高周波化に伴い，電源回路内の受動素子（インダクタやコンデンサ）の体積を削減できるため，結果的に回路全体の小型・軽量化が実現できます．しかし，動作周波数を高くすることによりスイッチングデバイスで発生するスイッチング損失が増加してしまいます．この損失はPsw = Cv2//2のように表せます．スイッチング損失に対して有効な手段にソフトスイッチング技術が挙げられます．スイッチング損失を低減させるために，スイッチングデバイスに内蔵されている寄生容量にかかる電圧を零にすることで，損失を極端に減らすことが可能です．電圧を零のタイミングでスイッチングすることを零電圧スイッチング（Zero Voltage Switching: ZVS）と呼びます．ソフトスイッチングの達成は，電源回路において重要な開発課題となります．
　ソフトスイッチング条件を達成する代表的なDC-DCコンバータの1つにE2級コンバータがあります．しかし，負荷変動に対して出力電圧が変化するため，一般的に出力電圧を一定にするための制御回路を実装することが多いです．しかし，外部から制御回路を実装する必要があるため，全体の回路構成が複雑化してしまいます．
　このような背景の中で，負荷変動に対して一定の出力電圧と零電圧スイッチング条件を実現する負荷非依存動作が注目されています．負荷非依存動作を適用することで制御なしに出力電圧一定と零電圧スイッチングを達成できるため，回路構成が簡単になり，汎用性の自由度が広がります．